新型コロナウイルス「5類」移行について~第1弾:入院/外来提供体制の対応の変更点~

令和558日より、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「2類相当」から、季節性インフルエンザ等と同等の「5類」へ移行されます。新型コロナウイルスが2類感染症として取り扱われていた際は、国は、医療体制や公費支援を結核等と同様の2類相当として行ってきましたが、季節性インフルエンザと同様の5類に変更を行うことにより、通常の診療対応に移行する対応としています。

今回は、第1弾として、入院/外来提供体制の移行に伴う国の対応の変更点や継続内容について主なものを整理したいと思います。

 

Ⅰ)入院/外来共通事項

1.新型コロナウイルス感染症に罹患又はその疑いのみを理由とした診療の拒否は、応召義務における『正当な事由』に該当しない旨を明確化する。

-以前よりコロナ患者を受け入れているか否かに関わらず、多くの医療機関において発熱等の患者を受け入れるための適切な準備を行うこととされていますが、医療提供体制が十分でない医療機関においては、近隣の急性期病院といった診療可能な医療機関への紹介が必要になります

 

2.新たにコロナ患者対応を行う医療機関における感染対策のための施設整備や個人防護服の確保等に対して、国が必要な支援を行う。

-当該内容は今までも行われてきたことではありますが、移行後は以前までコロナ患者を受け入れてこなかった医療機関も含めて対応するとされているため、継続が決定されています。

 

3.感染対策について、ガイドラインに沿いつつ安全性だけでなく効率性も考慮した対応への見直しを行う。具体的な内容は以下の通り。

 

①新型コロナ患者・疑い患者診療時の個人防護具の選択について

・サージカルマスクを着用し、ゴーグルやフェイスシールドで目を防護

・手袋とガウンは、患者および患者周囲の汚染箇所に直接接触する可能性がある場合に装着

・エアロゾル産生手技を実施する場合や激しい咳のある患者や大きな声を出す患者に対応する場合にはN95マスクを着用

 

②病室の割り当て・換気

・新型コロナ疑い患者は原則として個室管理

・新型コロナ確定患者は個室での管理が望ましい

(コホーティングを行うこともある)

・病棟全体のゾーニングは基本的に必要ない

・インフルエンザ流行時と同じように、病室単位とする対応も可能

・病室内から廊下へ空気が流れるといったことがないよう、空調換気設備の吸排 気の設定や適切なメンテナンス、必要に応じたクリーンパーティションの利用 等により、可能な限り空気の流れが廊下から病室内に向かうように工夫

 

-新しくコロナ患者を受け入れる医療機関については、上記の内容を参照し、前述の設備等の購入費用の補助も活かしながら、受け入れ体制の整備を行う必要があると考えられます。

 

出典: 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について(令和5317日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)

URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001086594.pdf

 

2)入院

1.現行の約3,000の病院での対応から、全病院(約8,200)での対応を目指す。病院ごとの役割分担は、以下の通り。

 

①確保病床を有していた重点医療機関等(約3,000)

⇒重症・中等症Ⅱ患者への重点化を目指す

 

②これまで受入れ経験のある重点医療機関等以外の医療機関(約2,000)

⇒軽症・中等症Ⅰ患者の受入れを積極的に促す
特に、高齢者を中心に、「地域包括ケア病棟」等での受入れを推進

 

③これまで受入れ経験のない医療機関

⇒受入れを促す

 

-弊社がご支援させていただいている医療機関(病床規模:100床~200床・重点医療機関以外)では、コロナ患者受入れ用の確保病床を全て閉鎖し、今後は比較的軽症の患者の受入れを行う予定の医療機関もあります。

 

出典:新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(ポイント)(令和5310日 新型コロナウイルス感染症対策本部)

URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001070703.pdf

 

2.入院調整においては、都道府県ごとにまずは軽症・中等症Ⅰの患者から調整の取組みを進め、秋以降はその進捗を踏まえて重症者・中等症患者について、調整の取組みを進める。これら入院調整の取組みは、地域の実情に応じて5類移行を待たずに進めること。

-貴院がこれまでどのようなコロナ対応を行ってきたかを振り返りつつ、5類移行後の役割検討を地域の事情を踏まえ進める必要があります。

 

3)外来

1.対応医療機関数を現行の全国約4.2万(令和52月時点)から、最大で全国約6.4万(※)とすることを目指す。都道府県は、受入患者を限定している医療機関に対して、患者を限定しない旨を促す。

(※)インフルエンザ抗原定性検査を外来においてシーズン中、月1回でも算定している医療機関数

 

2.発熱患者等の診療又は検査を行う医療機関を「診療・検査医療機関」として指定し、公表する取組みを継続する。

-一部の医療機関に患者が集中し、医療のひっ迫といった状態になることを防ぐ、発熱等の症状のある患者が検査・診療に素早くアクセスすることができるようにするといった意図があると考えられます。

 

入院、外来に共通する内容として、「役割の明確化と分担の促進」があります。全ての医療機関がコロナ患者受入れを求められる中で、客観的に自院の役割をどこに置くのかは、経営方針・判断次第とも言えます。コロナ禍におけるこれまでの経営面での影響等を踏まえ、各病院様の今後のコロナ対応も踏まえた改善シナリオの検討もご支援させて頂きます。

 

次回は5類移行における診療報酬特例、病床確保料の見直しについて掲載予定です。

 

※上記は筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

一覧に戻る

お電話・FAXでのお問合わせ