平成30年度診療報酬改定 ~急性期一般入院料~
先日2月7日の中医協総会において、平成30年度診療報酬改定の答申書が示され、個別改定項目の点数および算定要件が明らかになりました。さらに、3月5日には、診療報酬改定に係る告示・通知が発出され、答申時点では不明だった施設基準等の詳細についても示されました。
今回の改定において、般病棟入院基本料は再編・統合され、現行7対1および10対1は「急性期一般入院料」へと、13対1および15対1は「地域一般入院基本料」へと分けられました。
今回は、改定項目のうち「急性期一般入院料」についてご説明させて頂きます。
①入院料本体の再編・統合(現行7対1と10対1の中間評価の設定)
②重症度、医療・看護必要度について
①入院料本体の再編・統合
◆名称変更
・一般病棟入院基本料(7対1、10対1) ⇒ 急性期一般入院基本料
◆入院料の区分
入院料の区分は以下の通り7段階に設定されています。
【図1:入院料区分について】
・現行の7対1入院基本料と10対1入院基本料の間に、中間の評価として「急性期一般入院料2」
ならびに「急性期一般入院料3」を創設
・急性期一般入院料2および3は、後述する重症度、医療・看護必要度Ⅱによる評価が必要
◆経過措置(現行の7対1入院料)
・病棟群単位の届出、許可病床200床未満の病院における重症度、医療・看護必要度要件の緩和措置
⇒ 経過措置は廃止、平成30年9月30日までの間、急性期一般入院料2の算定が可能
・平成30年3月1日時点で7対1入院基本料を算定している病院および病棟群届出を行っている病院
⇒ 平成32年3月31日までの間、急性期一般入院料2および3の届出が可能
②重症度、医療・看護必要度について
◆評価方法の新設
・重症度、医療・看護必要度Ⅰ(従来通りのHファイルを用いた評価)
・重症度、医療・看護必要度Ⅱ(A項目・C項目:EFファイル、B項目:Hファイルを用いた評価)
※評価方法Ⅱを用いる場合、判定方法変更の届け出が必要
◆評価項目の見直し
・C項目開腹手術後の対象期間:5日間 ⇒ 4日間
◆評価基準の見直し
・(新設)A得点1点以上B得点3点以上かつ「B14 診療・療養上の指示が通じる」又は
「B15 危険行動」のどちらかに該当する患者
◆算出方法の変更
・1ヶ月単位での算出 ⇒ 3ヶ月単位での算出
・3ヶ月以内の1割以内の変動に対する措置 ⇒ 廃止
◆経過措置
・平成30年3月1日時点で7対1入院基本料を算定しており、許可病床数が200床未満の病院が
急性期一般入院料2または3を届け出る場合
⇒ 平成32年3月31日までの間、重症度、医療・看護必要度Ⅰによる評価が可能
・平成30年3月1日時点で7対1入院基本料を算定しており、許可病床数が200床未満の病院が
急性期一般入院料2を届け出る場合
⇒ 平成32年3月31日までの間、必要度Ⅰ:27.0%以上 必要度Ⅱ:22.0%以上を基準値とする。
・平成30年3月1日時点で7対1入院基本料を算定しており、許可病床数が200床未満の病院が
急性期一般入院料3を届け出る場合
⇒ 平成32年3月31日までの間、必要度Ⅰ:26.0%以上 必要度Ⅱ:21.0%以上を基準値とする。
判定基準見直し後の各入院料における要件は下図の通りです。
急性期一般入院料1では、旧要件と比較して5.0%の引き上げとなっています。急性期一般入院料4、5、および6についてもそれぞれ旧要件と比較して3.0%必要度が引き上げられることとなります。
【図2:急性期一般入院料の重症度、医療・看護必要度基準値】
弊社が保有する各病院のHファイルを用いて、新基準の重症度、医療・看護必要度(重症度、医療・看護必要度Ⅰ)を試算したところ、3.0%~4.0%程度の増加が見られました。患者構成によっては10%以上増加する病院もあるようです。新設された評価項目〔A1点、B3点(指示が通じるまたは危険行動を含む)〕の影響により、特に年齢層が高く、認知症を患う患者さんの多い病棟においては、該当患者数が大きく増加する傾向にあるようです。
本改定においては、現行の7対1入院基本料と10対1入院基本料の間に中間の評価が新設され、7対1病床と10対1との診療報酬上の影響は緩やかになりました。看護配置や必要度要件も緩和されたことにより、通年での看護師確保や必要度の維持に苦慮してきた病院については、看護師数の減少による一時的な傾斜配置や必要度の低下が緩和され、入院料の選択枝が広がりました。
今回、必要度基準値が更に引き上げられ、7対1(入院料1)の要件達成が益々厳しくなる病院もあるかと思われます。これまで同様に入院料1の維持に向け取組を行うのか、一時的もしくは常態的に入院料2や3に移行し病院機能を再編するのかなど、今後の病院運営を行う上での選択肢が拡がる改定となったのではないでしょうか。検討に際して、弊社が貴院のお役にたてれば幸いです。(病院の現状について把握したい)
また、新たにEFファイルからA項目とC項目を評価するという方法が選択できるようになりました。包括範囲の医療行為を確実に登録(入力)することを踏まえ、作業負担がどの程度軽減されるのか、どの程度評価の精度が保たれるかなど、貴院にとってどちらの評価方法が適しているのかについても併せて検討が必要と思われます。
※ 上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。
病院コンサルティング事業部 神崎