ベースアップ評価料について

昨今の物価高騰や他業界の賃上げ状況等を踏まえ、2024年の診療報酬改定にてベースアップ評価料が新設されました。医療機関で働く職員の待遇を改善し、人材確保を促進させることが目的です。

 

ベースアップ評価料は、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(医師、歯科医師、専ら事務作業を行う者は対象外)について、ベースアップを実施するために新設された評価料です。

政府の方針では、令和6年度に令和5年度比+2.5%、令和7年度に令和6年度比+2.0%のベースアップを目標としています。


当該評価料の算定にあたり、その収入の全額を対象職員のベースアップ及びそれに伴う賞与・時間外手当・法定福利費等の増加分に用いることが施設基準上の要件とされており、疑義解釈においては「当該評価料以外の収入や、賃上げ促進税制等の活用により、政府目標の達成を目指すことが望ましい。」と記載されています。

 

(対象職種の基本給を、令和6年度に令和5年度比+2.5%、又は令和7年度に令和5年度比+4.5%の引き上げを達成することで、対象外職種である40 歳未満の勤務医、勤務歯科医、事務職員等の賃金改善を実施することが可能となっています。)

 

 

 

 

▼算定要件や施設基準については下記参照。

 令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】(厚生労働省保険局医療課)

 

算定にあたり、「評価料全額を対象職員のベースアップに充てる必要がある点」、「定期昇給や一時金としての支給ではなく、基本給や毎月の手当として支給する必要がある点」等には注意が必要です。

 

 

 

▼算定によるメリット・デメリットについては次のようなものが考えられます。

 

 

⇒デメリットはあるものの、長期的な目線で見れば、経営の安定化や質の高い医療

 の提供に繋がるものであり、総合的にはメリットの大きい制度と考えます。

 また、本制度を活用し、ベースアップを実施した医療機関かそうでないかで、人

 材確保面で格差が広がる恐れがあります。

 

 

届出後は翌年度8月に「賃金改善実績報告書」の提出が必要になります。ベースアップ評価料の算定実績および賃金改善の実績額について、『外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ』の算定開始月から当該年度末の3月までの状況を報告します。(記載方法等の詳細は、今後発出予定)

 

また、『外来・在宅ベースアップ評価料Ⅱ』『入院ベースアップ評価料』を算定している医療機関については、毎年3,6,9,12月に実績報告・評価料区分の再評価が必要となります。

 

 

 

 

▼(例)2024年6月より算定を開始した場合。

 

 

 

当社ご支援先では、多くの民間病院様で届出を行っている状況であり、公立病院様では人事院勧告を経て検討されている状況です。

(人事院勧告に伴う給与の増加分についても、ベースアップ評価料の対象とすることが可能)

 

また、一部の企業立病院や公立病院では、結果的にベースアップ評価料の基準を上回るベースアップが実施されているケースもあり、本制度を活用することで、病院の費用負担軽減に繋げている病院もあります。

 

 

 

最後に…

‟人材確保”は多くの医療機関の課題です。求職者が就職先を選定するにあたり、給与水準が全てではありませんが、重要な選定基準となることは確かです。

 

昨今の報道の通り、他業界では今回の評価料の基準を大きく上回るベースアップが継続的に実施されています。

これらの影響は、医療職よりも他業界との競合にさらされる可能性のある看護補助者や事務職等の確保において顕著になることが想定されます。

病院内における賃金バランスに考慮しつつ、競争力のある賃金水準や処遇面の整備という難しい判断を迫られることになります。

 

 

また、地域や病院の事情により、必要な職種や採用が難しい職種は異なるかと思われますが、それぞれの事情を勘案した給与制度の見直しも特に民間医療機関では今後求められることでしょう。

既に、薬剤師や看護師などは一部の地域において、処遇面において特別な配慮を行っているケースも散見されます。

 

国の令和6年度補正予算において、ベースアップ評価料算定機関に限った給付金の支給が決定されるなど、ベースアップ評価料算定を推奨する動きが活発化しており、今後も同様の動きが起こる可能性があります。

 

メリット・デメリットを見極めたうえで、職員の待遇改善、人材確保のためにベースアップ評価料の活用を検討しましょう。

 

 

 

↓厚生労働省HP

ベースアップ評価料等について|厚生労働省

 

※上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

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