実効性ある病院間・施設間の連携 −地域医療連携推進法人について−
患者を中心とした診療情報を含む診療連携の仕組みは、ICTを活用したネットワーク構築を通じて全国各地域で取り組みが進んでいる状況にあります。
一方で、病院間や施設間レベルでの本当の意味での連携は、国が期待するほど進んでいない状況にあると言えます。昨今の厳しい経営環境を踏まえると、自施設の経営を優先せざるを得ない状況も要因の1つであると考えられます。
そこで、これらの課題解決や地域医療構想を実現する選択肢の1つとして、2017年度に地域での医療機能の分担や連携を進める目的に医療機関や介護施設などを運営する設立母体の異なる法人が共同参画する「地域医療連携推進法人制度」が創設されました。
(厚生労働省 地域医療連携推進法人制度について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177753.html
しかしながら、制度発足後8年ほどが経過していますが、現時点全国における地域医療連携推進法人は45法人の認定に留まっている状況です。
なぜ、当初期待されたほど制度が普及していないのでしょうか?
過去に検討を実施された医療機関などの状況や意見を踏まえると、以下のような点が挙げられると考えます。
確かに地域医療連携推進法人は、あくまで連携を推進するための枠組みであって、課題を解決する処方箋そのものではありません。
しかしながら、法人設立の目的や解決すべき(したい)課題を分かり易く整理することで、地域医療連携推進法人が自施設あるいは地域の課題解決のための有力な打ち手になり得るかは、判断が可能であると思われます。
病院の目線とはなりますが、地域医療連携推進法人において想定されている取り組みを経営インパクト順に並べると、以下のような整理が出来ると考えます。
経営へのインパクトが小さい方に列挙される取り組みは、法人化せずとも施設間での話し合いにより実現が可能な取り組みであると言えますが、インパクトが大きい取り組みほど設立母体の異なる法人間では実現が困難な取り組みとなります。
(経営へのインパクトを考慮した地域医療連携推進法人における一般的な連携事業)
では、想定する取り組み(連携事業)の視点以外に、持続的かつ効果的な法人運営にあたってのポイントはどういう点が挙げられるでしょうか。前述の法人が普及しない理由の裏返しになりますが、筆者は以下のように捉えています。
2023年度からは、個人立医療機関の参加や外部監査の実施等といった連携法人の一部事務手続きを緩和するなどの動きも見られます。医師や看護師をはじめとした医療従事者の偏在、結果として地域内の提供医療機能が地域ニーズに合致していない状況も全国で散見される中、当該仕組みは、これらの課題解決や地域医療構想実現にあたって有力な選択肢としてますます期待されます。
厚生労働省からも、運営中の地域医療連携推進法人関係者に対するアンケート結果の詳細が公表されるなど、設立目的が近い既存法人の動向も情報収集可能な環境にあります。
(地域医療連携推進法人制度に関するアンケート調査結果:2021年12月実施)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000958995.pdf
今後、法人設立を検討される地域や法人におかれては、先行事例の動きも踏まえ、地域課題の特定ならびに法人設立により期待されること(目的)を明確化することが何よりも重要となります。
当社としても、関係者でよりスムーズな合意形成を図るべく、客観的な視点で地域や個別施設ごとの状況を踏まえた地域課題の明確化(可視化)ならびに設立に向けた取り組みをサポートさせて頂きます。
※上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。