2024年度診療報酬改定(入院) ~『急性期一般入院料』に関する改定について~

2024年度診療報酬改定に向け、中央社会保険医療協議会より「個別改定項目」が公表されています。個別改定項目はいわゆる短冊と呼ばれ、「個別改定項目(その3)」では今年度改定で新設された項目や既存項目における施設基準の変更点等が明らかになっています。

その1(2024/01/26mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00245.html

その2(2024/01/31mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00243.html

その3(2024/02/07)mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00246.html

 

今回は、『急性期一般入院料』に焦点を当て、簡単にご紹介いたします。
具体的な改定内容としては、主に以下4点が挙げられています。

 【増 点】入院基本料見直し
 【厳格化】重症度、医療・看護必要度Ⅱの要件化
 【見直し】重症度、医療・看護必要度の評価項目・施設基準見直し
 【見直し】急性期一般入院料1の平均在院日数見直し

 

各項目の詳細については、現時点で以下のことが明らかになっています。

 

【増点】急性期一般入院基本料の見直し

すべての区分(急性期一般入院料1~6)において、40歳未満の勤務医師、事務職員等の賃上げに資する措置として1日あたり点数設定を見直すことが予定されています。
賃上げ対応のため、増点が期待されます。なお、他の入院料でも同様に検討されています。

 

【厳格化】重症度、医療・看護必要度Ⅱの要件化

重症度、医療・看護必要度(以下、必要度)は急性期患者の手厚い看護の必要性を評価することを目的に2008年度診療報酬改定から導入されました。必要度はその評価方法から必要度Ⅰ(=看護職員による直接評価)とⅡ(=電子カルテシステムを用いた評価)の2つに分けられていますが、今回の改定では測定に係る負担軽減および測定の適正化を推進する観点から、必要度Ⅱを用いた評価を要件とする対象病棟が以下のとおり拡大します。
なお、一定期間の経過措置が設けられる予定です。(期間未定)

※許可病床数が200床未満で、必要度Ⅱを用いて評価を行うことが困難な場合
(=電子カルテシステムを導入していない場合)を除く

 

【見直し】重症度、医療・看護必要度の評価項目・施設基準見直し

急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から、必要度の判定に係る評価項目および該当患者割合の基準見直しが予定されています。
※重症度、医療・看護必要度に関する詳細については後日配信予定です。

 

評価項目の見直し

評価項目の見直しについて現時点で明らかとなっている内容は下記のとおりです。

  C項目の対象手術および評価日数について実態を踏まえて見直す
  短期滞在手術等基本料の対象手術等を実施した患者を評価対象者に加える
  A項目について以下のとおり見直す

【厳格化】「創傷処置」について重症度褥瘡処置に係る診療行為を
     評価対象外とする
【見直し】「創傷処置」「呼吸ケア(喀痰吸引のみを除く)」について、
     必要度Ⅰの評価対象を必要度Ⅱにおいて評価対象となる診療行為を
     実施した場合とする
【厳格化】「注射薬剤3種類以上の管理」について、上限日数を7日とすると
     ともに対象薬剤から「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」等の
     静脈栄養を除外する
【厳格化】「抗悪性腫瘍剤」について入院中の使用割合が、
     注射:6割未満、内服管理:7割未満の薬剤を除外する
【増 点】以下の項目の評価を、2点→3点に変更する
     ・抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)
     ・麻薬の使用(注射剤のみ)
     ・昇圧剤の使用(注射剤のみ)
     ・抗不整脈薬の使用(注射剤のみ)
     ・抗血栓塞栓薬の使用
     ・無菌治療室での治療

 

該当患者割合の基準見直し

評価項目の見直しに伴い、該当患者割合の基準が下表のとおり見直されます。評価項目が厳格化傾向のため、全体的に基準は引き下げられています。
また、急性期一般入院料1では新たに、以下の①・②の両方を満たすことが施設基準として設けられ、B項目に係る評価が廃止される予定です。
 ①「A3点以上」orC1点以上」に該当する割合
 ②「A2点以上」orC1点以上」に該当する割合


なお、必要度基準該当患者割合に関しても、一定期間の経過措置が設けられる予定です。(期間未定)

 

【見直し】急性期一般入院料1の平均在院日数見直し

医療機関間の機能分化推進(=急性期機能の集約)および急性期における医療提供体制を評価する観点から、急性期一般入院料1の病棟における平均在院日数が16日に見直される予定です。

 

上記の他、急性期一般入院料1においては、下り搬送を評価した「救急患者連携搬送料」の新設に伴う在宅復帰率の計算式変更や、小児入院医療管理料3との一体的な運用が可能となるなどの点で見直しが予定されています。

 

なお、もし仮に入院料が基準下げとなった場合の減収インパクトは以下のとおりです。急性期一般入院料1の医療機関(病床数:200床、稼働率:90%)が急性期一般入院料2に基準下げとなった場合、年間20,367千円の減収が想定されます。特に急性期一般入院料3→4への基準下げの影響は大きく、年間68,985千円の減収が想定されるため各医療機関は基準維持に向けて早めの対応が求められます。

※病床数:200床、稼働率:90%、現行の入院料にて試算

 

今回の改定では、医療従事者の人材確保や賃上げ・業務負担軽減に向けた取組や急性期医療のニーズが高い患者に対応する医療機関に対する適切な評価に重きが置かれています。具体的な点数や基準値など明らかになっていない部分は多々あるものの、引き続き動向を注視しておく必要があります。

 

今回は、『急性期一般入院料』に関する2024年度診療報酬改定の動向についてご紹介いたしました。今後も適宜、次期診療報酬改定に係る情報をお送り申し上げます。

 

※上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

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