2024年診療報酬改定~『地域包括医療病棟入院料』の新設~

中央社会保険医療協議会より、2024年1月26日で令和6年度診療報酬改定の「個別改定項目(その1)」が公表されました。

「個別改定項目(その1)」の中では、今回新設された項目や、また既存項目における施設基準の変更点(点数詳細は除く)が明らかとなっています。

今回その中から、地域で救急患者等を受け入れる病棟の評価として新設された、

『地域包括医療病棟入院料』についてご紹介いたします。

 

これまでの診療報酬改定に係る協議の中で、「高齢化に伴う救急搬送需要の増加への対応」が1つ大きなトピックとして取り上げられてきました。

その背景として、次の外的要因が挙げられています。

・国内の総人口は減少に差し掛かっているものの、高齢化率(65歳以上人口)は
 今後も増加傾向にあること(上図)。

・救急搬送される方の構成比を10年前と比較すると、
 近年では高齢者、中でも軽症・中等症の患者数が増加していること(下図)。

※出典:中医協 総-35.12.15 入院(その8
              「高齢者の救急患者等に対応する入院医療について」より抜粋

 

このような傾向を受けて、限りある医療資源を有効に活用する視点から、意見交換会の中で次のような意見が上がりました。

「要介護の高齢者に対する急性期医療は、介護保険施設の医師や地域包括ケア病棟
 が中心的に担い、急性期一般病棟は急性期医療に重点化してはどうか」

「地域包括ケア病棟はまさに在宅支援の病棟であり、高齢者の亜急性期をしっかり
 受けられるため、このような役割を推進すべき。」

「医療機関と介護保険施設の平時からの連携が重要であり、医療機関としては
 地域包括ケア病棟等を有する中小病院がその主体となるべきである。」

 

しかし一方で、看護配置131の地域包括ケア病棟のみでは受けきれない患者も想定される為、看護配置10対1相当の入院料での受止先の必要性を主張する意見も上がりました。

そこで新設されたのが、今回の「地域包括医療病棟入院料」であると考えます。

 

この『地域包括医療病棟入院料』の位置付けについて、一部機能が既存の地域包括ケア病棟入院料や回復期リハビリテーション病棟入院料と重複する部分が見受けられますが、これらより急性期寄りの、『(三次救急医療機関等からの)下り搬送患者の救急受入~受入患者の在宅復帰』に特化した制度設計となっています。

 

施設基準の1つとして、『救急用の自家用車等で緊急搬送された患者 又は 救急患者連携搬送料(新設)の算定患者の割合●割以上』の上限が設けられています。当該新設項目は三次救急を行う医療機関が対象であり、「(三次救急医療機関で)初期診療を実施し、連携する他の保険医療機関において入院医療を提供することが適当と判断した上で、当該他の保険医療機関において入院医療を提供する目的で医師、看護師又は救急救命士が同乗の上、搬送を行った場合に算定する。」項目となっています。
このことからも、軽症・中等症の高齢者救急の受け止め先として、今回の『地域包括医療病棟入院料』が想定されているといえます。

 

また、地域包括ケア病棟入院料同様「自院一般病棟からの転棟割合●未満」という制限が設けられています。地域包括ケア病棟においては許可病床が少なければ上記制限対象から除外されていますが、新入院料では保有する許可病床数の上限※が設定されていません。すなわち、新入院料を導入した『全ての医療機関』において、自院一般病棟からの転棟はある程度制限されると読み取れます。(=外部からの患者受入を促進する目的か)

※地域包括ケア病棟入院料2・4では許可病床200床『以上』の病棟で、自院一般病棟からの転棟を6割未満に制限する要件あり

あくまで筆者の個人的な見解ではございますが、当該入院料の転換元としては、同様に101看護配置を求められる急性期一般入院料2~6が想定されており、既存病棟の転換を促す方向で、新設入院料の点数設定は急性期一般入院料2~6より高くなるのではないかと推察しております。
(事実、令和51227日公表の【令和6年度診療報酬改定等に関する1号(支払側)の意見】の中では、支払側からの意見として、『(高齢者救急の受入対象は)看護配置10 対 1の急性期病棟を主に想定し、一定の移行期間を認めるとしても、明確な期限を設定し、急性期一般入院料2~6は早急に廃止するべき。』との意見が挙がっています。)

 

新たな入院料の新設に伴い、6月の施行に向けて、導入検討される医療機関様が多いかと存じます。

当該入院料導入検討の際には、外部環境として『地域の救急医療需給状況』や『近隣三次医療機関との位置関係・連携体制』、また内部環境として『院内における救急患者受入体制』等が重要になると考えます。

弊社では、病棟転換にかかるご支援も行っており、顧客先病院様においては、外部・内部環境の整理~増収シミュレーション~課題の整理・解決に向けた対応の一連の流れでサポートしております。

 

今回は、新たに新設された『地域包括医療病棟入院料』についてご紹介しました。

今後も適宜、次期診療報酬改定に係る情報をお送り申し上げます。

 

※上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

 

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