「医師の働き方改革」~第3弾:医師のタスク・シフト/シェアについて~
以前、2024年度から施行される「医師の働き方改革」について、概要や要点をご紹介しました。(「医師の働き方改革」~第1弾:要点・概要について~)
今回のブログでは、医師の時間外勤務時間の短縮に向けた取組の一例として、医師事務作業補助者や看護補助者へのタスク・シフトに焦点を当てます。
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医師の働き方改革の施行にあたっては、医師の時間外勤務時間の短縮という大きなハードルがあり、対策に悩まれている方も多いことと思います。
医師の業務量を見直すうえでは、医師以外で実施可能な業務をいかに移行していくかが重要となります。本来医師でなくても対応可能な業務を、慣例に従って医師が行っていることはないでしょうか。今後は、医療機関で働く職員が、各自の専門性を活かしていくことが求められます。
今回は、医師から医療資格を有さない職員(医師事務作業補助者・看護補助者)への「タスク・シフト/シェア」に焦点を当てて事例等をご紹介いたします。
【目次】
1.医師事務作業補助者へのタスク・シフト/シェア
-医師から移管できる業務について
-医師事務作業補助者の新規採用により算定可能な加算
2.看護補助者へのタスク・シフト/シェア
-医師から移管できる業務について
-看護補助者の新規採用により算定可能な加算
1.医師事務作業補助者へのタスク・シフト/シェア
【医師事務作業補助者に移管できる業務】
下記は医師の指示・確認の下で医師事務作業補助者が対応可能な業務(一例)です。
・診断書等の文書作成補助
・診療記録への代行入力
・医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)
・入院時の案内等の病棟における患者対応業務
・行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)
【医師事務作業補助者の新規採用により算定の可能性がある加算】
・医師事務作業補助体制加算1・2
-令和2年度診療報酬改定において、「医師の働き方改革を推進し、質の高い診療を提供する観点から、医師事務作業補助体制加算について、評価を充実する」として、加算点数が50点増点しています。国の方針としても、医師事務作業補助者の活用を推進する動きがみられます。
-当該加算を算定することができれば、医師事務作業補助者の人件費の一部を賄うことができます。
※ただし、当該加算を算定する場合、医師事務作業補助者では対応できない業務が一部ございます。
2.看護補助者へのタスク・シフト/シェア
【看護補助者に移管できる業務】
医師から看護補助者へ直接的にタスク・シフト/シェア可能な業務(一例)は下記の通りです。
・患者への入院時オリエンテーションや検査説明
・患者の移送や誘導
また、看護補助者が看護師のタスクの一部を担い、看護師が医師のタスクを担うといったタスク・シフト/シェアの連鎖も期待できます。
【看護補助者の新規採用により算定の可能性がある加算】
下記は令和2年度診療報酬改定により、評価が充実した加算です。
・25対1(看護補助者5割以上)~75対1急性期看護補助体制加算
・夜間30対1~100対1急性期看護補助体制加算
・看護補助加算1~3
・夜間75対1看護補助加算
・看護補助配置加加算(地域包括ケア病棟入院料)
・夜間看護加算(療養病棟入院基本料)
・看護補助加算(障害者施設等入院基本料)
→上記加算の増収効果と看護補助者の人件費を精査し、増収が見込まれる場合には看護補助者の新規採用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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上記でお示ししたように、近年は政策を用いてタスク・シフト/シェアが推進されており、今後はさらに医師のタスク・シフト/シェアの動きが強まっていくと思われます。その分医師事務作業補助者や看護補助者の確保(採用)は、どの医療機関でも課題となってくることが予想されます。
医師の時間外勤務時間を削減するためには、抱えている業務を、①効率化する、②多職種に移管する、③辞める(縮小する)の3通りが考えられます。いずれにしても、現状の業務を把握したうえで、周囲への影響をシミュレーションし、各業務に対して最も適切な対策を選んでいく必要があります。
上記に限らず、お困りの際には、是非ともご相談ください。
※上記は筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。