「救急医療現場における医療関係職種の在り方」 ~救急医療における働き方改革~ 第1弾

昨年11月に「医師の働き方改革」に関して、政策概要と医療機関が対応すべき事項の2つの観点から記事を掲載致しました。

救急医療の場においても例外でなく、医師の総時間外勤務の短縮を求められる反面、出動件数・搬送人員は30年前と比較して約2倍になるなど、高齢化の加速に伴いその医療需要は急激に高まっています(下図)。

【出典:医師の働き方改革に関する検討会報告書】

 

【出典:令和元年版救急・救助の現況総務省消防庁】

 

私どもの顧客先病院においても、「職員の負担軽減」と「安定した医療体制の確保」の双方への対応に苦慮されている場面が見受けられます。

このような状況を受け、救急医療の場における多職種の配置・連携の協議のために、厚生労働省において「救急医療現場における医療関係職種の在り方に関する検討会」が開催されています。当記事では2回にわたり、当検討会の協議内容と今後の展望に関する筆者の考察をご紹介いたします。

 

【目次】

 1.救急の場における看護師の配置に関して(今回掲載)

 2.救急救命士の積極的な登用について(次回掲載)

 3.まとめ・今後の展望に関する考察(次回掲載)

 

1.救急の場における看護師の配置に関して

今後の救急外来における多職種の配置・連携等の検討材料として、令和2年度の厚生労働科学特別研究にて、「救急外来における医師・看護師等の勤務実態把握のための調査研究」という初の詳細な調査が実施されました。当記事をお読みいただいている病院様の中にも、調査回答をされた病院様がおありかと存じます。

以下、調査結果の概要をご紹介してまいります。

 

【調査】

対象:令和2年度病床機能報告の救急医療機関(三次・二次) 3,423施設

調査方法:アンケート調査

調査期間:2021年11月~12月

回答状況:608施設

【結果概要(一部抜粋)】

~救急外来の看護単位・職員配置パターンについて~

回答の中で最も多かったのは「『一般外来も含めた1看護単位』に(救急外来を)含む」であり、338施設(55.9%)と、全体の半数以上を占めました。現に救急外来には看護配置基準が定められておらず、「『救急外来』で1看護単位」設けている施設は133施設(22%)に留まっています。

また職員配置パターンについても同様に、「救急外来も含めた『外来』に看護職員を配置」している施設が343施設(56.9%)と、全体の過半数を占めています。「救急外来に看護職員を配置」している施設は218施設(36.0%)に留まり、「病棟等の他部署から必要時に派遣している」と回答した施設も一部あります。その他現場からの定性的な回答として、「救急外来に看護配置基準がないので、管理・監督者は看護師が必要と分かっていても、病棟の看護配置が優先されてしまう」という声も挙がっています。

また「専門・認定・特定行為研修いずれかを修了した看護師」の配置施設における「救急車受入台数・応需率の向上」や「医師の対応業務数が非配置施設より少ない」こと、「トリアージ担当看護師」の配置施設においては「医師より看護師によるトリアージ実施が多い」ことが調査結果として示されており、救急外来における看護師の役割の重要性や、専門性の高い看護師の配置による医師から看護師への業務分担推進の可能性が示唆されています。

 

この結果を受けて当検討会では、救急外来における看護配置の設定を重要視する声が挙がっています。実際に施設基準として配置を明確化するか、するのであればどのような配置基準になるのか、今後の協議動向に注意が必要です。(次回へ続く)

 

【参考資料】

「救急医療の現場における医療関係職種の在り方に関する検討会」(厚生労働省)

「救急外来における医師・看護師等の勤務実態把握のための調査研究」(厚生労働科学研究成果データベース)

※厚生労働科学特別研究「救急外来における医師・看護師等の勤務実態把握のための調査研究」の詳細はこちら

 

※上記は筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

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