看護職員処遇改善評価料の概要

これまで、看護職員処遇改善の原資には、補助金が充当されてきましたが、昨年10月より診療報酬として新設されることになりました。

2022年810日の中医協答申において、収入を3%(月額平均12,000円程度)

引き上げるための措置として、診療報酬の枠組みを通して支払われることが決まり、2022年101日より「看護職員処遇改善評価料」が新設され、診療報酬としての算定が開始されました。

今回はその制度概要を説明し、次回は医療機関視点での課題等を整理します。

 

看護職員処遇改善評価料の算定方法について整理します。

 

Ⅰ)対象となる医療機関:下記のいずれかを満たす医療機関。

・救急医療管理加算に係る届出を行っている保険医療機関であって、

 救急搬送件数が年間で200件以上であること
 ※賃金の改善を実施する期間を含む年度の前々年度1年間における実績

・救命救急センター等を設置している保険医療機関であること。

 

 Ⅱ)対象となる職種

・看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師)

・医療機関の判断によりコメディカルの賃金改善に充てることが可能
 対象コメディカル:看護補助者、理学療法士、作業療法士、機能訓練士

          言語聴覚士、義肢装具士、歯科衛生士

          歯科技工士、診療放射線技師、臨床検査技師

          臨床工学技士、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士

          社会福祉士、介護福祉士、保育士、救急救命士

          あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師

          柔道整復師、公認心理士

          その他医療サービスを患者に直接提供している職種

 

Ⅲ)評価の区分及び計算式

評価区分は165通りあり、下記計算式の結果に応じて1点~340点が算定可能です。

分子)看護職員等の数

   →直近3か月の各月1日時点における看護職員数の平均値

    ×12,000円×1.165(社会保険料相当)

分母)延べ入院患者数

   →直近3か月の1月あたりの延べ入院患者数の平均値×10

 

Ⅳ)地方厚生局への届出

毎年3月、6月、9月、12月に上記計算式で算出し変更がある場合は届出を行う。しかし、変化の割合が1割以内である場合は区分の変更を行わないとされています。

 

Ⅴ)実績確認

「賃金改善計画書」を4月に作成し、「賃金改善実績報告書」を7月に地方厚生局へ提出する必要があります。なお、改善計画書等の根拠資料は当該評価料を算定する年度終了後3年間保管する必要があります。

 

以下、具体的なケースを用いた試算結果になります。医療機関により、方針や判断は異なりますが、柔軟性がある人事制度の設計や運用も求められてきていると言えます。

 

【事例】

〈前提条件〉

・許可病床数:200床、病床稼働率85

 看護職員数:150人、医療技術職など対象職種:50

・算定する評価料10041点)

・延入院患者数:5,100人/(3か月平均)

 

〈評価料〉

A】=(150人×12,000円×1.165)÷(5,100人×10)41.11

看護職員処遇改善評価料41(41)

 

〈年間見込み額〉

41点×5,100人×12か月×10円=25,092千円

⇒看護職員等に対し、ベア等(基本給or定例手当)2/3以上支給する必要がある。

25,092千円×2/3÷150人÷12か月=9,294

⇒上記が対象職員に対する毎月のベースアップする最低額として計算される。

 

※上記は筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを

 申し添えます。

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