平成30年度診療報酬改定 ~地域包括ケア病棟入院料~
先日2月7日の中医協総会において、平成30年度診療報酬改定の答申書が示され、個別改定項目の点数が明らかになりました。
今回は、改定項目のうち「地域包括ケア病棟入院料」について触れたいと思います。
今回の改定において、地域包括ケア病棟入院料に関する内容は、主に以下の5点となります。
①入院料本体の再編・統合(2段階→4段階評価へ)
②在宅復帰率の定義の見直し
③救急・在宅等支援病床初期加算の見直し
④看護職員夜間配置加算の新設
⑤地域包括ケア病棟入院料の包括外項目の追加
それぞれの詳細については後述しますが、今回厳格化されたのは、現行の入院料2の点数が-20点(2,058点→2,038点)となったことと、在宅復帰率の分子から療養病棟・介護老人保健施設等が除外されたことの2点です。その他の改定内容は、在宅患者の受入れ等の診療実績のある病院に対する評価が手厚くなっている、という印象です。
①入院料本体の再編・統合
入院料本体の再編・統合イメージは、下図(図1)のとおりです。現入院料1が新入院料2に、現入院料2が新入院料4になります。上述のとおり、現入院料2(新入院料4)は減点されますが、現入院料1(新入院料2)は、点数の増減はありません。さらに、200床未満の場合は、実績部分が加算された入院料(新入院料1、3)が算定できるようになります。
実績部分を含めた施設基準の変更点は、下表(表1)に整理しています。
入院料1、3を算定するためには、表1の4~8を満たす必要があります。表1の5・6では、在宅患者の受入れ(サブアキュート)が求められており、7では、在宅医療の提供・地域医療機関との連携・介護サービスの提供が求められています。
②在宅復帰率の定義の見直し
在宅復帰率の定義は、下図(図2)のように見直されます。割合は7割のまま変更ありませんが、療養病棟・介護老人保健施設が分子から除外され、逆に有床診療所については、機能強化型のみの限定が外され介護サービス提供施設へと変更となりました。これまでの退院先の状況次第では、復帰率7割の基準を満たすことが難しくなる病院、逆に上昇する病院も出てくるのではないでしょうか。一度、自施設の状況を確認しておいた方が良いと思われます。
③救急・在宅等支援病床初期加算の見直し
地域包括ケア病棟入院料の救急・在宅等支援病床初期加算については、下図(図3)のように、一般病棟からと在宅からの患者受入れを分けて評価することになります。一般病棟からの受入れの評価は現行のままで、在宅から受入れた場合の評価が手厚くなります。
④看護職員夜間配置加算の新設
看護職員夜間配置加算の概要は、下表(表2)のとおりです。認知症に関するB項目該当患者が3割以上いる場合には、一般病棟のように看護職員夜間配置加算が算定できるようになります。
⑤地域包括ケア病棟入院料の包括外項目の追加
今回、地域包括ケア病棟入院料の包括外に追加される項目は、以下の2つです。
1. A250 薬剤総合評価調整加算 250点(退院時1回)
2. J042 腹膜灌流(1日につき)
薬剤総合評価調整加算は、前回改定で新設された項目で、6種類以上の内服薬が処方されている患者が、退院時に2種類以上減薬した場合に算定できる加算です。今回、加算の評価対象に地域包括ケア病棟が追加されました。
人工腎臓はすでに包括外となっていますが、今回新たに腹膜灌流も包括外となります。腎代替療法において、血液透析に比べて患者のQOLが高い、腹膜透析や腎移植を推進する流れに沿った改定といえます。
今回の改定の入院料に関する見直しの特徴は、全ての病棟区分の評価において「基本部分」と「実績評価」の組み合わせ方式に変わったことです。実績評価は、それぞれの病棟区分が今後の地域医療構想の実現に向けた取り組みの中で求められる機能を評価するものとなっています。急性期一般入院では「重症度」、療養では「医療区分」、地域包括では「在宅」、回復期では「リハビリ」。それぞれの領域で本来果たすべき機能を有し、しっかりとした体制で取組めている施設には診療報酬上の評価も付いてくるという構図です。
地域包括ケア病棟に求められる役割は、「在宅から受入れ在宅に帰す」となっていることが伺えます。しかしながら、多くの地域包括ケア病棟では、自院の転棟患者の受入れを中心とした運用をされているかと思います。
今後の制度改革の中でも在宅移行の方向性は変わらないと想定されますので、自院内の転棟が中心の施設では、在宅患者を受入れる体制作りを進めていくことが望ましいと考えられます。
※ 上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。
病院コンサルティング事業部 宮川