DPC係数を精査する~診療情報管理士の活躍に期待~

DPC/PDPS制度において、DPC係数を上げることが医業収益の増収に有効であることは周知の通りです。

 

 DPC係数の中で、機能評価係数Ⅰを上げるためには、係数の対象となる届出項目の洗出しもしくはグレードアップが必要となり、現状レベルと要求レベルとのギャップを明らかにした上で、院内の人員計画・配置および体制を構築していくことが求められます(表1)。 

 

 【表1】 自院施設基準届出の見直し(例)(一般病床100床の場合)

 機能評価係数Ⅱに関する自院の努力余地は、保険診療係数、効率性係数が焦点となりそうです(後発医薬品係数が機能評価係数Ⅰ「後発医薬品使用体制加算」への移行を想定)。後発医薬品係数が機能評価係数Ⅱから抜け、暫定調整係数分が振り分けられると、機能評価係数Ⅱの1項目毎のウエイトがアップすることとなり、上記2項目の係数に対しての自己努力が一層必要となってきます。では、この2項目についてどのような改善策が有効でしょうか。そこには診療情報管理士の活躍が大いに影響するように思われました。

 

 保険診療係数は、DPCデータ提出においてより正確なデータの提出が必要となります。部位不明・詳細不明コードの使用割合(現状は使用割合20%以上にて当該評価を0.05点減算。2018年度改定では10%以上への変更が検討されている)を削減するためには医師との連携が必要です。既に多くの病院では医師への情報提供が行われ、どのような病名が部位不明・詳細不明であるかを踏まえて、詳細な病名の登録を依頼されていると思います。併せて診療科毎に部長と相談し、あらかじめルールを決めておくことも有効と思われます(表2)。確認事項の情報源はカルテやサマリーあるいは画像診断など検査報告書等が考えられます。少しでも迷うようなケースは担当医への確認が必要であり、病名変更後は医師の確認(ログを残すなど)も必要です。

 

 【表2】 病名変更規定(例)

 

 

 また、未コード化傷病名(現状は使用割合20%以上にて当該評価を0.05点減算。2018年度改定では2%以上への変更が検討されている)に対しては、病名登録自体をワープロ入力ではなく、リストから選択するシステムを講じる必要があります。この場合、医師からリストへの追加要請が発生しますが、ここでも診療情報管理士の活躍に期待できそうです。

 

 DPC対象病院では概ねクリアされているのが現状とも思われますが、2018年診療報酬改定に向けて、今一度自院の使用割合を再確認されてはいかがでしょうか。

 

 

 副傷病がDPC効率性係数に影響 !?

 

 次に効率性係数は、自院にて年間12症例以上ある包括対象となる診断群分類の在院日数を短縮すると改善する仕組みですが、在院日数を短縮すると病床稼働率が下がり空床を生じるというジレンマがあります。

 

 新入院患者を増やすことはもとより、院内のDPC対象病床以外の病床をうまく活用する、もしくは病床再編成するなど、患者さんの状態を鑑みつつ転床(転棟)を取り入れる努力が必要となります。

 

 効率性係数の改善に関しては、副傷病にも着目することが重要です。定義副傷病は入院時併存症と入院後発症病名(入院中の患者管理に影響を与えた病態)それぞれ10病名を登録することができます。いくつかの病院様の登録状況を拝見すると、入院時併存症および入院後発症病名があまり積極的に登録されていないケースが見受けられます。副傷病名の登録により、多くの場合1日当たりの包括設定点数の増加(入院期間Ⅰでは低下する場合があります)や入院期間Ⅱが延長となります。

 

 下の図はある病院様のデータを元に「副傷病名あり・なし」の影響をシミュレーションしたものです。DPC診断群分類年間12症例以上、うち定義副傷病名が設定されているDPCコード84分類を対象として、「副傷病名なし」の場合と「副傷病名あり」の場合を請求差額と入院期間を比較したグラフです。

 

 

 グラフは縦軸をDPC包括請求額と出来高請求額の差とし、横軸は入院期間を"0"とした場合のDPCコード別平均在院日数としています。水色は「副傷病なし」、青色は「副傷病あり」です。

 

※前提として、「副傷病1あり」の影響を検討するためにDPCコードを変更。

 

 この病院様は「副傷病なし」であってもDPC包括請求額が出来高請求額を上回っていましたが、在院日数は入院期間Ⅱを超えるケースがありました。このDPCコードが「副傷病あり」になると、入院期間Ⅱ超えが少なくなり(調査対象DPC分類数のうち入院期間Ⅱ超84項目中53項目63.1%から6項目7.1%へ減少)、DPC包括請求額と出来高請求額の差も好転する結果となりました(症例数と差額の合計:副傷病ありで358%アップ)。

 

 効率性係数は相対評価であるため、定義副傷病による効果が効率性係数改善に繋がるとは断定出来ませんが、少なからず影響を及ぼすものと考えられます。

 

 副傷病の情報は、支払いや入院期間に影響しない場合も診断群分類の精緻化や複雑性係数などの機能評価に影響すると言われています(「DPC研究班の今までの研究」伏見清秀)。部位不明・詳細不明コードおよび未コード化傷病名の精緻化と併せ、効率性係数改善のご参考になれば幸いです。

 

 

※ 上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

 

 

病院コンサルティング事業部 安永(診療情報管理士)

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