平成28年度診療報酬改定を読む(5)~重症度、医療・看護必要度~
今回の改定において、大きく見直し(厳格化)が図られるものの一つが、「重症度、医療・看護必要度に関連する施設基準」です。
主な改定内容としては以下の通りです。
(7対1入院基本料の施設基準)
(10対1入院基本料算定病棟における看護必要度加算の施設基準)
この改定による減収を抑える、或いは増収を図ることを考えた場合、7対1入院基本料算定病院においては同入院料の届出維持が、10対1入院基本料算定病院おいては上位加算の届出が望まれます。
特に7対1入院基本料については、この基準を満たせなくなった場合、病院の経営を左右する程の減収(及び固定費比率の上昇)を伴う可能性があります。
平成28年9月30日までの経過措置は設定されているとはいえ、早急な対処が必要です。
重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合を伸ばす手段としては、①基準を満たす患者数を増やす、②基準を満たさない患者数を減らす(計算対象から除く)の2つのみです。
優先検討すべきは①であり、まずは過去の実績から、基準を満たす患者がどのような経路(救急搬送、○○病院からの紹介等)で、どのような疾患で入院しているのか等の傾向を確認する必要があります。
その傾向を踏まえた上で、当該患者を確保するための対策(救急受入体制の強化、周辺医療機関との連携促進等)を検討することが必要です。
(※ただし、医師等の許容数や、他の施設基準(在宅復帰率等)に及ぼす影響への配慮も必要です。)
①の対処に限界がある場合、②の手段を検討することになります。これは病床の一部を他の病床機能に転換する考え方です。
病床機能の中でも、特に地域包括ケア病棟入院料(及び管理料)については、本稿の主旨である「一般病棟における重症度、医療・看護必要度」だけではなく、「病院全体の入院患者数や一日当たりの入院収入」という面においても経営的なメリットを享受できる可能性があります。
(※その根拠は本稿では割愛させて頂き、次回以降のブログで述べます。)
その一方で考慮すべきは「医師等の医療職員の反応」です。
急性期病院という位置づけ、いわばブランドの中で、使命感を持って医療行為をおこなっている職員にとっては、モチベーションの低下に繋がる要素となり得ます。
また医療職員の確保という面でも同様のことが言えます。
したがって、②の手段を検討する際は、病院全体での意思統一を図りつつ、慎重に検討を進めることが求められます。
今回の改定も、特に急性期病院にとっては、自院の運営における重要な方針判断、取捨選択を迫られるものとなります。
現状を鑑みる、将来を見据える良い機会であると捉え、前向きにご検討してみてはいかがでしょうか。
※ 上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。
病院コンサルティング事業部 重枝