平成28年度診療報酬改定を読む(4)~退院支援加算~
今回の改定では、退院支援に関する評価が大きく見直されています。中でも注目されるのは、「退院支援加算」です。
退院支援加算は、現在の「退院調整加算」を改変したもので、算定要件や支援体制の違いによって3区分での評価が設定されました。概要は下表のとおりです(今回は一般病棟に着目し、NICUを対象とした退院支援加算3の説明は割愛いたします)。
算定要件・施設基準の概要
退院支援加算1は、退院調整加算の施設基準を強化した新設項目で、一般病棟退院患者に退院支援を行った場合、退院時に600点を算定することができます。当該加算を算定する場合には、退院支援員の増員とともに、算定件数も増加し、収益的にはプラスの影響があると考えます(届出を行うかどうかは、自院の状況をよく確認した上での判断が必要となります)。
一方、退院支援加算2は、原則的には退院調整加算の施設基準と同様ですが、点数は従来の在院日数別の評価が廃止されました。在院日数14日以内の退院患者に対して退院支援を行ったとき、現在は340点算定できますが、新年度からは190点に減少します。
一見マイナスにも見える変化ですが、実際に医療機関がどのような影響を受けそうかを、簡単に試算しました。
--------------
【試算の前提】
・ 7対1一般病床数400床、退院患者数1,000人/月の急性期病院で、
1ヶ月あたり50名の一般病棟退院患者に対して退院支援を行っている
・ 在院日数別の退院支援患者数が、以下の構成比である
→ 14日以内:15~30日:31日以上=16:17:17
【結果】
・ 退院支援加算2を算定した場合、退院調整加算と比較して若干の収益増の見込
--------------
今回設定した前提条件下においては、退院支援加算2を算定した場合の改定による影響は若干のプラスとなりました。
実際に、弊社の顧客先における退院調整加算の算定状況を確認すると、在院日数15日以上の患者に対する算定件数が全体の60%~85%程度を占めているケースが多く、単純に算定項目が退院調整加算から退院支援加算2に変化しただけでは、収益面でマイナスの影響を受けることはないようでした。
退院支援加算2は、現行の退院調整加算との点数設定の差が大きく見えますが、現行体制を大幅に変更することなく、支援件数を増やすことができれば、収益的なメリットは十分に得られると考えられます(現状で在院日数14日以内の患者への退院支援件数が多い場合を除きます)。
したがって、今後、各医療機関の皆様にとっての課題は、「退院支援件数を増やすこと」と「算定件数を増やすためにどのような体制をとるか」となります。
退院支援加算1を届け出るためには、相応の体制をとることが必要とされます。現状よりも人員を増やすのであれば、当然退院支援の件数も増やすことが前提となります。病院は、現在の入院患者から退院支援件数の増加がどの程度見込まれるか、それが人員体制の強化(人件費の増加)に見合ったものなのかを確認し、届出の是非を検討する必要があるでしょう。
入院早期から在宅復帰に向けた支援を行うことは、患者のADL低下防止や院内感染リスク低減等の効果があると言われています。施設基準の厳しい退院支援加算1を算定することは、将来的に「医療の質の高さ」を示す指標の1つとして重要性が高まる可能性も否定できません。病院の状況を確認した上で、必要性が認められるようであれば、積極的に算定できる体制を整えることが望ましいのではないかと考えます。
※ 上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。
病院コンサルティング事業部 海江田