平成28年度診療報酬改定を読む(3)~答申書をうけて~
2月10日の中医協総会において、平成28年度診療報酬改定(以下「H28改定」と記載)の答申書が示されました。 これにより、平成28年度診療報酬の個別改定項目の点数も見えてきました。
診療報酬改定における主たる変化と医療機関への影響は、下表のように整理できます(もちろん、医療機関によっては下表に記載する内容以外の影響を大きく受ける可能性もあると思います。ここでは多くの医療機関が共通して受ける影響という定義をもって整理を進めています。)。
H28改定の基本方針に沿って、急性期・慢性期の絞り込み、地域包括ケア・在宅の充実につながる個別改定が行われています。「入院医療の減少、在宅医療の増加」に向けた改定であることは明らかです。この結果、「保有する病床の役割をどう変化させるか」、多くの医療機関でそれを思案しなければならない状況になっています。
高度・一般急性期に着目した場合、注目すべき変化は、やはり7対1病棟における「重症度、医療・看護必要度」の見直しです。評価項目と看護必要度を満たす患者の割合(15%から25%へ)が変更されています。
各医療機関によって受ける影響は異なると考えられますが、7対1病棟の維持にこだわりすぎると、入院患者数の減少につながり、経営をひっ迫する恐れも出てきます。
自院の入院患者に合った病棟選択を行う方が、経営的には良い、というケースもありえます。7対1病棟を有する病院が新たに病棟選択をするとすれば、「10対1病棟」と「地域包括ケア病棟」の選択肢を持つことになります(例外的に、回復期リハや療養病棟の可能性もあります。)。
H28改定では、向こう2年間に限り、1つの医療機関で10対1病棟と7対1病棟を併設できることになっています。しかし、10対1病棟を選択するにあたっては、いくつか留意すべき事項があるようです。
1 病棟数が4以上の医療機関は、複数の病棟を届け出なければならない
2 この届出措置を利用した場合は、原則としてこれらの病棟間での転棟は出来ない
3 この届出措置を利用した場合は、平成29年4月1日以降は、7対1入院基本料の病床数を、一般病棟入院基本料の病床数の60/100以下にしなければならない
4 病棟群単位による届出(7対1と10対1の併設)は、平成28年4月1日から2年間...、の文言しかない(つまり、病棟群単位による届出措置は平成30年4月1日以降も継続するか否かは不透明であり、この届出措置を利用した場合は、将来的に10対1病棟を主とした医療施設に変わらざるをえない可能性がある)
この内容を見る限り、10対1病棟の選択は、将来に大きく影響する重要な判断事項であると考えられます。医療機関の置かれている状況によっては、地域包括ケア病棟の方が当面の有力な選択肢として考えやすいかもしれません。
いずれにしても、多くの医療機関が将来を見据えた病棟選択を求められている状況に変わりはなく、短期的観点からの対応も、自院の中長期の方向性・戦略を踏まえたものであることが望ましいと考えられます。
※ 上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。
病院コンサルティング事業部 宮川
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