Vol.33 DPC症例の原価計算を活用するメリットについて

平成15年にDPC制度が導入され、約10年が経過した。DPC適用病院は、今や約1500病院を数えるほどに増加した。医療の標準化を進めることを大義とした制度であるが、病院経営の観点からは、他院との比較による自院の強み・弱みの把握、更には症例別・患者別の原価計算を行えることに、多くの病院の関心を集めた(それまでは、部門別・診療科別収支計算が関心を集めていた)。

コンサルティングをしていると、行く先々で「症例別・患者別の原価計算」が経営の定石であるかのように言われるケースは多い。しかし、その経営の定石を活用している病院はまだまだ少ないのが実情である。多くの病院は、DPC分析ソフトを導入しても、自院の「診療収入を上げること」に注目した活動を行うにとどまっている。

病院の経営数値は、構成診療科の数字(収入・費用)の積み上げであり、その診療科の数字(収入・費用)は、取扱う症例に起因して発生する。いうまでもなく、症例別の収入・費用・利益に着目し、改善策を検討することは、効率的な経営改善を行うのに有効なアプローチである。
では、有効と考えられる症例別の原価計算が何故活用できないか、それは以下のような弊害(錯覚も含む)があるからである。

・症例別収支の赤字・黒字により評価をされるという現場の思い込みがあること
・原価計算の費用配賦に関して、現場の理解を得られないこと(結果として、現場が活用価値のない資料と判断する)

・症例別・患者別に正確な原価を把握するためには手間がかかること(症例別・患者別の原価を正確に把握するには、患者直課の費用を正確に拾っていくことが必要であるが、そのためには人的労力を必要とするケースが多い)

上記から、情報システムの構造など技術的な面から症例別の原価計算を行うことが難しいと判断されることも多いが、技術的な問題をクリアしてもなお「診療現場の理解を得られない」という問題が残る。この問題に対処するためには、以下の対応が肝要である。

・診療科の評価をして攻め立てる材料ではないことをしっかりと説明すること
(損得に関係なく、地域に必要とされる診療は行う必要があること。そして、診療科が行っている診療内容を先に評価することが重要)

・トップダウンでやってみること

経営層と現場のお互いの理解が必要である。特に、経営層が活用する意図(思い)を現場に伝え、まずは使ってみること(スタートすることが)である。PDCAサイクルを回し、有効であることを現場に対して証明できれば、以降も欠かせない分析ツールとしていくことができる(また、少なくとも現場の評価・考課に活用するという考えは、活用当初には持たない方が良い)。

折しも、今年7月には国際モダンホスピタルショー2013が開催される。DPCに関連した展示もなされるようである。病院経営(単なる経営改善に留まらず、経営・診療方針設定も含む)に寄与するDPCデータの活用、このことを再考するきっかけになるかもしれない。

国際モダンホスピタルショウ2013://www.noma.or.jp/hs/2013/

※上記は、あくまでも筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではありません。

病院コンサルティング事業部 森