Vol.30 病院における健診事業の位置付けについて

来年度の診療報酬改定に向けて、政府は基本方針として「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」と「病院勤務医の負担の軽減」を重点課題とし、また後期高齢者医療制度については廃止も視野に入れた検討が進められています。診療報酬の改定内容によっては、医業収益の減益につながるだけに、経営改善を進めてこられた病院にとっては頭の痛い問題です。そのため、診療報酬改定に左右されない収入源の確保も病院にとっては重要な課題と言えます。

 また、診療報酬の改定だけでなく、診療報酬算定のベースとなる患者数の減少に対して、どういった視点から新規患者の獲得を行なうべきかを苦慮されている病院も多いと思われます。主な新規患者の受入窓口としては救急外来や時間外診療、地域医療連携先からの紹介などがありますが、将来的な患者数の確保のため、従来のような病気の患者だけなく、予防の視点から潜在的患者についても積極的に取り込んでいく必要があります。

 上記の2つの課題に対する取組として、健診事業が挙げられます。健診事業の本来の目的は地域住民の予防にありますが、一方で病院全体の経営という視点からみた場合、健診事業の位置付けは大きく分けて「①診療外収入の確保」と「②潜在的患者の囲い込み」が考えられます。①についてですが、健診事業は診療報酬改定の影響を受けず、毎年一定の収入が見込めます。病院収入全体に占める健診事業の割合は入院や外来のものと比較すると非常に小さいものですが、病院事業収支の不足分を補填する数少ない手段と考えられます。②については、定期健診を通じて、受検者から信頼を得ることができれば、病気になった際の治療先として健診を受けている病院が選択される可能性が高まり、将来的に外来・入院の患者数向上につなげることができます。また、住民健診後の二次検査の受入や健診センターなどの健診施設との連携強化についても積極的に取り組み、新規患者の獲得につなげていくことが重要です。

 健診事業を安定した収入の確保や将来的な患者数増加につなげるには、年間を通じて一定の受検者数を確保しなければなりません。そのため、病院としては健診における運用面の見直しにより、受検者サービスの向上や健診枠の拡大について検討する必要があります。

 地域医療を担う病院として、今後も安定的かつ継続的に医療の提供を行なうには、健診事業をはじめ従来の病院経営のあり方を見直し、病院事業収支の改善に向けた新たな取組を模索していくことが重要です。