Vol.28 病院の施設・設備の再整備にあたって

近年、老朽化した病院においては、施設・設備の再整備を行うことが喫緊の課題となっています。患者さんだけでなく、そこで働く職員の方からも、老朽化した病院の再整備を望む声は多く上がっています。

 より良い医療環境を提供するために、患者さんや職員の方に対して「満足度調査」を実施し、自院の実態を定期的に把握し改善に繋げている病院は多くあると思います。当社もそのような「満足度調査」をご支援する機会がありますが、調査結果では患者さんだけでなく職員の方からも、病院の施設や設備等のハード面でのアメニティ改善に関するご指摘が多く上がっています。患者さんの場合、心身に何らかの問題を抱えて来院されるため、出来るだけ快適な環境で療養したいという心理は当然の要求であると考えられます。また職員の方の場合も、日々を過ごす環境が手狭で薄暗く、圧迫感があるような状況では、日々精力的に業務に打ち込むことに無意識のうちに支障が生じているかもしれません。

 現在の医療を取り巻く環境下において、老朽化した病院が抱える課題 としては、<1>衛生環境の改善、<2>バリアフリーの整備、<3>プライバシーの確保、<4>医療ニーズへの対応が挙げられます。これらの課題は、老朽化の問題を抱える病院が建設された当初には、それほど問題視されていなかったことであり、国民の生活環境や価値観の変化に伴い、当時からは想像も付かないほどに医療を取り巻く環境の変革が起こった結果によるものです。例えば、時代と共に変化する医療ニーズに応えていくために、新たな診療科の開設や CT・MRIなどの大型医療機器の導入、健診事業への対応、救急医療への対応等、新たな取組を開始するにあたって、施設改修や増築等を余儀なくされたケースがあります。

 老朽化した病院での施設・設備の再整備の重要性については、今まで述べてきた通りですが、再整備の際にかかる莫大な費用を前に、施設・設備の再整備を躊躇している病院も多くあると考えられます。病院 の施設・設備の再整備について、平成 21年度の補正予算で2つの医療関連の交付金が創設されました。ひとつは、「 医療施設耐震化臨時特例交付金 (1,222億円)」であり、災害拠点病院や救命救急センターを有する病院、二次救急医療機関が行なう耐震化整備が対象となります。もうひとつは、「 地域医療再生臨時特例交付金 (3,100億円)」であり、 地域の医療課題の解決に向けて策定する「地域医療再生計画」に基づく、病院の再編・ネットワーク化や医師の確保などの取組が主な対象となります。このように病院が様々な角度から地域の医療ニーズに応えられるように、国が支援を行なってはいますが、具体的にどのような対策を立てるかについては、病院の裁量に任されています。

 日々進歩する医療ニーズに対応するためには、中長期的で明確な計画に基づく病院の施設・設備の見直し・再整備が必要となります。その実施にあたっては緊急性・重要性・採算性の 3つの視点とビジョンの明確化が重要となります。そのうち緊急性・重要性・採算性については、仮に高額医療機器の購入を検討するにあたり、導入後の収支シミュレーションや職員の業務効率への影響、維持管理費用などの面から十分な検証を行なわなければなりません。また、明確なビジョンを持たずに、施設・設備の再整備を実施した場合、施設間の連絡通路が増加することによって病院構造が複雑化し、病棟から外来、病棟から検査室といった密な連携が必要な部署間の距離が以前よりも離れてしまったことで、患者さんと職員の方の負担が増加し、結果的に業務運用に支障をきたすことになりかねません。そのようなことにならないためにも、施設・設備の再整備の際には、自院が地域に対して今後どのような医療を提供し、また役割を担っていくべきかといった病院のビジョンを明確にすることが重要です。