Vol.26 医療界における平成20年

平成20年12月、年間の世相を現す漢字に「変」が選ばれ、例年通り京都清水寺で大きく揮毫されているニュースをテレビで見たのも記憶に新しいことと思い ます。アメリカに端を発する金融情勢の変動、薬品混入や産地偽装などに起因した食への安全意識の変化、日米のリーダー交代などの政治的な変革、またノーベル賞や北京オリンピックでの日本人の活躍による良い変化などが理由とされているようです。

 医療界でも多くの「変」がありました。平成20年度の診療報酬改定、中でも後期高齢者医療保険制度の創設は大きな波紋が広がりました。対象となる高齢者の方々の困惑、保険料負担についてクローズアップされましたが、一方では現役世代の負担支援金が非常に大きく、その影響で各健康保険組合では保険料が高騰、組合の破綻・解散へと繋がる状況となってきているようです。

 また、救急医療のあり方の変化も挙げられます。救急搬送の受け入れ拒否という事例は報道だけでもどれくらいあったでしょうか。そのたびに医師や病床の不足が取り立たされています。特に妊婦や新生児に係る救急体制には問題が多く深刻ですが、ようやく各地域における総合周産期母子医療センターの整備、また国立 大学附属病院に対する新生児集中治療室(NICU)の拡充など、少しずつではありますが具体的方針も出始めたようです。しかしながら、医師不足を解決する ための速効性をもった対策は見当たらず、多くの病院が縮小や閉院に追い込まれている現状もあります。
救急医療を受ける側である一般市民の意識やモラルの低下という変化もみられます。緊急度・重症度の低い軽症患者による救急車要請や救急医療機関の利用などが増加、現在の慢性的な救急医療体制不足の大きな要因となっているのも事実で、今では救急車利用への負担金検討の声も上がっています。

 このように医療界における平成20年の「変」も明るい話題は少ないようです。しかし年の瀬12月に国民健康保険の『子どもの無保険』問題を解消する改正国 民保険健康保険法が成立しています。事情により保険未加入となっている親のもと、充分な医療を受けられなかった子どもたちに対し、中学生以下の子どもが全 国一律に無償で受診することができるようになりました。市民運動開始から国会の法の成立まで約1年、スピード改革と言えます。しかし残念ながらこれも今後の運用や適正な管理方法に問題は残されているようです。

 その他にも『4疾患5事業』に対する医療連携体制の構築に向けた新医療計画の策定、メタボリックシンドローム防止のための『特定健診・保健指導』のスタートなどさまざまな変化がありました。新年を迎えても不安な年明けである堪はぬぐえませんが、「変」の意味には「来年は良い年に変えていきたい」という期待も込められているそうです。今年1年、医療界のみならず社会にとって明るい「変」を願いたいところです。