Vol.22 【安全な医療】をめざして

日ごとに進化する医療技術。その期待と要望は高まる一方です。その反面、医療現場におけるミスやそれが原因で発生する事故が増えてきていることも事実です。マスコミを通じ私たちが知りえる医療事故や訴訟はほんの1部であると思われますが、まさかと思う事例が連日のように報じられています。いつでもどの医 療機関でも事故の現場となり、いつでも誰でも思いがけなく当事者となっているのです。各医療機関では、医療安全管理体制の見直しやリスクマネジメントへの取組み強化など、地域住民や社会から信頼される医療機関であるべく、様々な体制整備が進められていることと思います。

 

医療にとらわれず『安全管理』については多くの業種で取り組まれており、一般の人にわかるように表示されています。すぐ近くでは建設や工事現場の看板でご覧になられたことはあるでしょう。そのような表示の意味は「私たちは会社として"安全"のため決められたことを守ります、守らせます。"安全"のためやってはいけないことをやりません、やらせません。」という企業としての意思表示です。この意味は医療の現場においても同様です。医療の『安全管理』とはその 医療機関が組織として「"医療安全"のための規律を遵守し責務を遂行します。」という取組みです。また、その体制を整備し表明するということは経営管理の トップである管理者や院長の指示と責任の上に成り立つものなのです。

 

医療界でもリスクマネジメントという概念が定着しています。まさに安全を確保するための組織活動であると考えられますが、最終的には個人の経験における予知能力というものが大きく影響します。医療では「患者様の回復や快適な(治療)生活を意識した正しい作業手順に従った行動で任務を遂行し、状況の変化を察知しすばやい対応をおこないます。」ということを、全てのスタッフが認識し業務に反映させることができるようになるか否かが、組織活動の目的であると言ってよいでしょう。医療機関としては、組織活動としてのリスクマネジメント体制を整えることにより、医療従事者個人が常に考えた行動をおこなえるようにして いかなければならないのです。実際にルールを無視した過失は別とし、故意ではないミスや認識不足の結果に発生した事故など事例はさまざまです。「人はミスを犯すもの」を前提にインシデントで留まっているうちに管理者、院長が認識し組織として取り組み、医療従事者1人1人が意識しなければなりません。インシデントレポート提出の徹底、報告内容の原因分析と対策実施、マニュアル整備と更新、院内フィードバックと周知徹底など地味な取り組みは果てしなく広がりますが、それが【安全な医療】のための大切な現状把握と対策実施への基礎資料というのを忘れてはなりません。

 

最後にもう一つ考えなければならないのは、もしも事故が発生した場合、被害者となるのは患者様やその家族であることはもちろんですが、当事者となってし まった医療従事者本人もそうであるということです。職務上の自信、また生活意欲を失うという精神的に大きなダメージを受けることは間違いありません。その上で訴訟や紛争ともなれば両者ともに時間をかけ、想像もしなかった苦しみを味わうことになってしまいます。日々の患者様への安全確保はもちろん、医療従事者のための「安全確保」も常に考えなければならないのです。【安全な医療】とは患者様とその家族、そして医療従事者がお互いに安心して関わる事ができるため、組織としてまた医療従事者本人として考えなくてはならない、そしてめざすべき大きなテーマだと言えるでしょう。