210日の中医協総会において、平成28年度診療報酬改定(以下「H28改定」と記載)の答申書が示されました。 これにより、平成28年度診療報酬の個別改定項目の点数も見えてきました。 

 診療報酬改定における主たる変化と医療機関への影響は、下表のように整理できます(もちろん、医療機関によっては下表に記載する内容以外の影響を大きく受ける可能性もあると思います。ここでは多くの医療機関が共通して受ける影響という定義をもって整理を進めています。)。

 H28改定の基本方針に沿って、急性期・慢性期の絞り込み、地域包括ケア・在宅の充実につながる個別改定が行われています。「入院医療の減少、在宅医療の増加」に向けた改定であることは明らかです。この結果、「保有する病床の役割をどう変化させるか」、多くの医療機関でそれを思案しなければならない状況になっています。

 高度・一般急性期に着目した場合、注目すべき変化は、やはり71病棟における「重症度、医療・看護必要度」の見直しです。評価項目と看護必要度を満たす患者の割合(15%から25%へ)が変更されています。

 各医療機関によって受ける影響は異なると考えられますが、71病棟の維持にこだわりすぎると、入院患者数の減少につながり、経営をひっ迫する恐れも出てきます。

 自院の入院患者に合った病棟選択を行う方が、経営的には良い、というケースもありえます。7対1病棟を有する病院が新たに病棟選択をするとすれば、「101病棟」と「地域包括ケア病棟」の選択肢を持つことになります(例外的に、回復期リハや療養病棟の可能性もあります。)。

 H28改定では、向こう2年間に限り、1つの医療機関で101病棟と71病棟を併設できることになっています。しかし、101病棟を選択するにあたっては、いくつか留意すべき事項があるようです。

 

  1. 病棟数が4以上の医療機関は、複数の病棟を届け出なければならない

  2. この届出措置を利用した場合は、原則としてこれらの病棟間での転棟は出来ない

  3. この届出措置を利用した場合は、平成29年4月1日以降は、7対1入院基本料の病床数を、一般病棟入院基本料の病床数の60/100以下にしなければならない

  4. 病棟群単位による届出(7対1と10対1の併設)は、平成28年4月1日から2年間...、の文言しかない(つまり、病棟群単位による届出措置は平成30年4月1日以降も継続するか否かは不透明であり、この届出措置を利用した場合は、将来的に10対1病棟を主とした医療施設に変わらざるをえない可能性がある)

 

 この内容を見る限り、101病棟の選択は、将来に大きく影響する重要な判断事項であると考えられます。医療機関の置かれている状況によっては、地域包括ケア病棟の方が当面の有力な選択肢として考えやすいかもしれません。

 いずれにしても、多くの医療機関が将来を見据えた病棟選択を求められている状況に変わりはなく、短期的観点からの対応も、自院の中長期の方向性・戦略を踏まえたものであることが望ましいと考えられます。

※ 上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

病院コンサルティング事業部 宮川

 

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12/21(月)に診療報酬の改定率が、厚生労働省よりプレス発表された。

改定率は、以下に示すとおり。薬価改定のマイナス分などを財源として、診療報酬本体はプラス改定になっている。

 ・ネット改定率 ▲0.84% 

 (内訳)

  ‐診療報酬本体 +0.49%
    各科改定率  (医科 +0.56% 歯科 +0.61% 調剤 +0.17%)

  ‐薬価      ▲1.22%

  ‐材料価格    ▲0.11%

 

・ネット改定率(実質) ▲1.03%

  ‐市場拡大再算定による薬価の見直し ▲0.19%を含んだ場合

 その他、改定率に含まれない適正化措置

  ・新規収載された後発医薬品の価格の引下げ

  ・長期収載品の特例的引下げの置き換え率の基準の見直し

  ・大型門前薬局等に対する評価の適正化

  ・入院医療において食事として提供される経腸栄養用製品に係る入院時食事療養費等

  ・医薬品の適正使用等の観点等からの1処方当たりの湿布薬の枚数制限、
   費用対効果の低下した歯科材料

 

薬価のマイナス改定以外も含めて2,200億円の適正化を図り、そのうち500億円を診療報酬本体に充てる。それによって、社会保障費の自然増による伸びを6,700億円から5,000億円にとどめる構図になっている。

さて、これから具体的な改定項目が出てくることになる。診療報酬本体が僅かではあるがプラス改定になったことから、どこに手厚い配分がなされるかが注目される。政策的に誘導したい部分に手厚い配分がなされると考えられるが、医療機関はその誘導に乗るべきか否か。

わが国では高齢化率の増加を背景に、医療費抑制の流れは当分の間続く。その煽りを受けて、手厚く配分された点数が後に適正化されることも予測される。

いわゆる「はしご外し」の可能性を見捉えて様子を見るか、或いは手厚く配分されるであろう領域(地域包括ケア、在宅医療など)にいち早く飛び込み、先発優位性を発揮してシェア・数量をとるか、どちらの考えも検討できる。しかし地域内での位置づけ・ポジショニングが重要視される昨今の状況からすれば、後者の選択が適切かもしれない(後に単価が低くなっても量で補う)。

いずれにしても、多くの医療機関でやりたい医療と求められる医療、その葛藤のピークが迎えられつつあり、それをどう収束させるかの回答期限も近付いてきている。

私たちの役割は、医療機関が状況分析を的確に行い、適切な回答を出すとともに、職員がベクトルを合わせて決まった方向に進み、成功する、という一連の流れをサポートすることであると考えている。

このブログでは、医療機関が「自院の今後」を考えるにあたって少しでも有用と思える情報・考え方を提供したい。

まずは、来年1・2月に出てくる診療報酬改定の内容をもとに、改定内容が医療機関に与える影響、或いは改定内容への対応方法などについて、私たちの視点から考察していきたいと考えている。

※上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。 


 

病院コンサルティング事業部 森

 

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早くも年末シーズンが到来し、今年も残すところ僅かとなった。

平成28年度の診療報酬改定にかかわる動きも活発化しており、12月7日の社会保障審議会(医療保険部会)では、診療報酬改定の基本認識、基本方針の確定案が示された。

示された基本認識・方針は、以下記載のとおり。

1.改定にあたっての基本方向

(超高齢社会における医療政策の基本方向)

(地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築)

(経済成長や財政健全化との調和)

2.改定の基本的視点と具体的方向性

(1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の文化・強化、連携に関する視点

(2)患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点

(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点

(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点

3.将来を見据えた課題

・・・平成30年度の同時改定を見据えた課題などが記載されている

 診療報酬改定に関わる議論は中医協においても既に活発化しており、具体的にどの項目が改定されそうかも見えてきている。

2025年モデル、地域医療構想ガイドライン等が既に示されているため、診療報酬改定もそれらと整合した形で動いていくことは容易に想像できる。7対1入院基本料、療養病棟入院基本料、回復期リハビリテーション(リハビリテーション算定件数の上限)などの要件変更は、その病棟の主旨に沿うよう、またしても「適正化」が図られそうだ。その一方、在宅医療などは新たな評価が組み込まれそうな様相である。

同審議会で今年7月に示された改定スケジュールでは、12月末に改定率が出る見込みだ。

年が明ければ、個別事項の内容が徐々に固まり、前回改定時と同様のスケジュールで対応が進めば、1月末には個別改定項目が出てくることになるだろう。

 今後、診療報酬改定の動向は逐次確認し、病院経営に与える影響についていち早く考察をしていきたいと考えている。

※上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

 

病院コンサルティング事業部 森

 株式会社麻生は、平成26年12月23日(祝・火)福岡国際会議場にて、株式会社マイナビ主催のインターンシップフェア福岡に参加いたしました。

 当日は、弊社ブースにお立ち寄り頂いた学生のみなさまに、医療業界の動向やコンサルタントの役割、当事業部の業務内容等をご紹介させていただきました。

 学生のみなさんの真剣な眼差しを目の当たりにし、私たちも医療・介護業界に関わることの意義や魅力を改めて考えなおすよい機会となりました。

 弊社は、来年2月に「株式会社麻生・ウィンターインターンシップ」を開催いたします。当事業部は、ウィンターインターンシップ二日目の選択プログラムとして、医療業界の基礎講座やグループワークを行う予定です。グループワークは、コンサルタントとして、病院内外の分析、課題解決、改善案の提案などを体験できるプログラムとなっております。

 その他多数のプログラムを用意しております。ご興味のある方は、下記リンクより詳細をご確認ください。(※エントリー対象は、大学及び大学院在籍生となっております。)

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株式会社麻生ホームページ

マイナビ2016

リクナビ2016

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 12月13日(土)に福岡銀行本店にて、ふくおかフィナンシャルグループ主催の医療セミナーで『地域包括ケア病棟(床)』をテーマに当事業部の部長が講演をさせて頂きました。

当日は、師走の慌ただしく寒い中、九州各県から多くの医療関係者の方々にご参加頂きありがとうございました。

 皆様もご存じのとおり、平成26年度の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟入院料・地域包括ケア入院医療管理料(以下、地域包括ケア病棟入院料)が新設されました。一般病棟7対1入院基本料の届出要件が厳格化されたことや亜急性期病棟入院料が、平成26年9月末で廃止されたことで地域包括ケア病棟入院料を取得し、地域包括ケア病棟(床)に変更した病院も少しずつ増えてきた頃ではないでしょうか。

 今回の医療セミナーでは、「地域包括ケア病棟(床)が、どの様なものかぼんやりとは分かるけど、実際の運用はどのようにすればよいのか」、「地域包括ケア病棟(床)に変更した病院はどのような取組みを行っているのか」といったことに対して、今年度、一部病棟を地域包括ケア病棟に変更した3病院の事例を題材に、変更前後の指標、運営上の特記事項、今後の課題などについて考察していきました。

 事例の3病院では、運用が軌道に乗って上手くいっている病院もあれば、運用が途上の病院もあり、抱えている課題や院内外の環境も様々でした。

ただ1つ言えることは、地域包括ケア病棟(床)の活用目的を明確に認識していなければ、使いにくい病棟(床)になる可能性があるということです。但し、運用の組立てが上手く出来れば稼働率アップ、収益増加が見込める病棟(床)であることが事例病院からも伺えました。地域包括ケア病棟(床)のポイントは以下となるのではないでしょうか。

 

  1. 各医療機関や施設の状況(地域の状況)を把握すること
  2. 自らの病院における入院患者特性の理解
  3. シミュレーションは地域包括ケア病棟(床)の収益検討だけでは不足
  4. 他病棟の役割(活用方法)
  5. 医師、看護師の地域包括ケア病棟(床)の役割や診療報酬等の体系理解

 

 事例病院とは、置かれている環境などが異なる中でも、事例病院の課題を考察し自院の状況と照らし合わせたとき、何かヒントとなるものがあったのではないでしょうか。廃止された亜急性期病棟の延長線上や代わりの病棟といった認識のままでは、単に名前を変えただけで機能しない病棟となってしまいます。また、地域包括ケア病棟(床)は、名前の通り「地域包括ケアシステム」の中で、在宅医療や介護と上手く連携していくこともキーとなっています。

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平成27年度 介護報酬改定の動向について

3年に1度の介護報酬改定の時期が目前に迫っている。

平成27年度介護報酬改定に向けた議論が厚生労働省や財務省の各分科会でおこなわれているが、介護サービスを提供する事業者としては、自施設・事業所の今後の経営を左右する事柄だけに、気が気でないだろう。

過去の介護報酬改定では平成21年度(改定率:+3.0%)、平成24年度(改定率:+1.2%)とプラス改定が続いていた。このまま来年度もプラス改定で行くかと思いきや、平成26年10月8日開催の財務省財政制度分科会で提言されたのは、各種加算を除いた、介護報酬(基本部分)の6%引き下げであった。 

財政制度分科会が介護報酬(基本部分)のマイナス改定を提言した理由として、以下の3点を挙げている。

① 介護職員の処遇改善(処遇改善加算の拡充)等に向けて財源の確保が必要なため

② 介護サービスの収益性が一般の中小企業の水準を大幅に上回るため

③ 特別養護老人ホームに巨額の内部留保が存在しているため

 

②については、財政制度分科会資料によると、介護サービス全体では、収入に占める利益の割合(収支差率)が平成25年度実績で8%であるのに対して、一般の中小企業の平均の収支差率は2.2%となっている。

また、③については、特別養護老人ホーム1施設あたりの内部留保が3億円程度存在しているとの試算結果を公表している。 

介護報酬の改定率については、各団体が反対を表明しているため、今後も議論が繰り広げられるものと思われるが、介護サービスを取り巻く経営環境が今まで以上に厳しくなることだけは間違いないであろう。

特に、特別養護老人ホームに関しては内部留保のこともあり、他の介護サービス以上の介護報酬の引き下げが想定される。大幅な増収が見込めない状況下においては、徹底した費用管理が重要となってくる。

例えば、包括契約(個別に契約している委託業務を1社に集約すること)による委託費の削減、照明のLED化による光熱水費の削減等が挙げられる。 

平成27年度の介護報酬改定に向けては、介護サービス事業者の経営の真価が問われる。

 

※  上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

病院コンサルティング事業部

次郎丸 大輔

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病床機能報告と地域医療構想について

今年ももう10月に入り、2014年も残すところ僅かとなった。今年は、例年になく涼しい夏であり、残暑を感じることもあまりないまま、仲秋の季節となった。

さて、季節とは逆に医療業界の動きは、これから益々活発になっていきそうだ。

11月には、1回目の病床機能報告が始まり、「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会(以下「検討会」と記載)」に関しては既に協議が開始され、来年1月にはとりまとめの予定である。地域医療構想策定の考え方も近いうちに定まりそうだ。

検討会の資料を見ると、圏域の設定についても見直し範囲のようであり、医療計画の根幹にかかわる考えが変わりうる可能性もあるようだ。

 二次医療圏や基準病床の見直しも、地域によっては生じるだろう。ただし、メディアに対する厚生労働省の発言を確認する限り、今後一時は、基準病床の考えが保持される(優先される)ようであるため、すぐに見直しがかかることはないと考えられる。

確かに、医療圏の分析等をおこなうと、二次医療圏での医療の完結が難しく感じることは多々ある。交通アクセスを考えると医療圏から流出することが必然と考えられるケースは、珍しくない。 

また、地域医療構想の策定にはあたっては様々なデータを活用することも想定されているようであり、ビッグデータ時代の到来を感じさせる。統計データを分析し、その結果から将来のかじ取りをいかに的確に判断できるか、がより重要になってくるだろう。 

地域医療構想ガイドラインの策定の目処は見えてきたが、全ての圏域が横並びで良い状況を作り出せるか?には、疑問が残る。 

都道府県の行政機能もさることながら、そのカギを握るのは地域医療を牽引するリーダー的施設ではないか。このリーダー的施設は、地域によっては複数存在するケースもあるが、これら施設が競合に打ち勝つという考えでなく、機能分化に関して柔軟に考えることができるか、地域医療の観点から自院の機能と周囲との連携を考えることができるかが重要であるように思う。 

※  上記は、筆者の個人的な見解であり、会社を代表する意見ではないことを申し添えます。

病床機能報告と地域医療構想に関しては、今後もその動向を追うとともに考察をおこなっていきたいと考えています。

病院コンサルティング事業部

  森 智之

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病床報告制度

診療報酬改定がおこなわれて4カ月が経過しました。

多くの病院にとって、病床機能報告がどのように動いていくのかは非常に関心が高いテーマではないかと思われます。「現状」と「今後の方向」、特に今後の方向について具体的にはどのように報告し規定されていくのかは、厚生労働省側でも引き続き協議がなされています。

平成26年7月24日には第12回病床機能報告・提供の具体的なあり方に関する検討会が開催されています。

この中では、「今後の方向」とするのは「6年が経過した日における病床の機能の予定」とする修正案が出てきています。6年先を報告してもらいつつ、それ以前に変更の予定がある場合はその時期も併せて報告してもらうことにより、比較的短期の予定も含めて病院側の考え方を把握していこうとするもののようです。

確かに、2025年時点の方向を出しても不確実性が高く、この短期~中期の報告の考え方については大きな異論はないのではと考えられます。途中での変更も可能にするような内容も触れられています。

一方、この検討会の中でもう一点気になっているのが、都道府県が「協議の場」を設置し医療機関とともに共通認識をもって機能分化を進めていくことが強調されていることです。

協議の場の合意に従わない医療機関がある場合等は、都道府県が一定の役割を果たしていく=転換中止の命令(公的医療機関)や要請(それ以外の医療機関)がなされるということです。

では、医療機関にとって何が大切になるのか。それは「準備」です。

協議をおこなうにしても、自院の機能が変わっていく場合に、その業務実施体制や収益性などがどのように変化していくのかを予め検討しておかねば何も発言できないといった事態になってしまうでしょう。公的な医療機関は地域住民の理解を得ていくためのプロセスも必要になるはずです。

6年は一つの目安に過ぎないでしょう。早い時期に検討をおこない報告していく医療機関は少なくないはずです。

病院コンサルティング事業部

部長 柳 倫明

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診療報酬改定の影響について

 平成26年度が始まって、2か月が経った。各医療機関、4月の診療報酬改定の影響を確認し始めたようだ。

 改定の影響については、やはり医療機関の機能により様々のようだ。プラスの影響を受けた施設、そうではない施設がある。どちらかといえば、今回の改定は各医療機関にとって、厳しいものになっているようだ。

 何が厳しいか、それは何と言っても7対1入院基本料を算定するため、「重症度、医療・看護必要度」、「平均在院日数」の基準、これをクリアすることだ。

 経過措置期間中(H26.4.1~9.30迄)にこの基準をクリアしようと、より早く患者を退院させる動きが活発化し、結果として病床稼働率の低下、収入の低下につながっている医療機関も少なくなさそうだ。

 ここで、以下のケースを確認頂きたい。

(例)

A病院・・・一般病床数250床、病床稼働率80%、入院延患者200人/日

入院単価50,000円、入院収入3,650百万円/年

このA病院において、病床稼働率が仮に5%downしたとする。

1日あたり10人/日の入院患者減少、年間収益に換算して183百万円の減収

この減収をカバーするには、2,700円程度、入院単価を上げなければならない。

適正化が目立つ、今回の改正で果たしてそれが可能か?

 当然のことではあるが、医療機関の収益に関して、病床稼働率の低下が与えるインパクトは、極めて大きい。

 病床区分の変更により、入院単価が変わるとしても、病床を活かす方法を検討することはやはり必要そうだ。上記事例の183百万円の減収は、単価30,000円/日の患者を17人/日を確保することでカバーできる。病床区分の変更とともに、病床稼働率の向上を検討していくことが現実的か?(上記事例の場合、稼働していない50床を地域包括ケア病棟、回復期などに変換し、一般病棟からの転棟、延べ患者数の増加を検討すること)

 急性期医療と医師をはじめとしたスタッフの確保、このつながりは意識せざるを得ない。一方で、早く退院させることばかりが、患者にとって良いものか、これもまた考えどころである。

 診療報酬改定が与えた4月の影響は、改めて「医療機関が方針を決める大事な時期にきていること」を伝えている。

 

病院コンサルティング事業部 森

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「病院建設費の高騰(2)」

病院の建設費用について、設計・施工企業関係者に話を伺うと、現在の急性期病院の坪単価は130万円を超える事例もあるようである。

建設資材の高騰を裏付けるように、国土交通省の「主要建設資材月別需要予測」によれば、2014年5月の対前年比は、セメントが8.9%増、生コンクリートが5.9%増、木材が10.1%増、普通鋼鋼材が12.4%増、形鋼が18.4%増、小型棒鋼が10.7%増、アスファルトが11.7%増の見込みである。一昔前の価格感では、もはや病院を建設できない時代である。

資材価格の増加基調が続く状況下では、価格が落ち着くまで建替え構想を延期する判断が経営的には妥当と思われるが、老朽化等の問題で待ったなしの場合には、事業計画の精査、及び適正な病床数の見極めの必要性を前回のブログで触れた。ワイングラス型と称される現在の7:1と10:1の一般病床数577,124が、2025年度のヤクルト型では高度急性期と一般急性期で53万床と8.17%減の姿が描かれている。平均在院日数についても急性期、療養共に現在よりも大幅な短縮が求められていることから、現在の急性期病床数を維持できる病院は稀少と判断せざるを得ない。

病床数だけでなく、手術室や放射線、内視鏡等の高機能部門、及び導入予定の高度医療機器等についても、現在の稼働状況と将来の稼働予測の精査が必要である。内外環境の十分な分析を行わず、思い込みで室(台)数や過剰な機能を決めてしまうと、計画通りの稼働レベルに達しない事態が起こり得る。

例えば、手術室数の決定には、手術待ち患者数と日数の推移に加えて、麻酔科医をはじめとした医療従事者の確保策が疎かだと、収益を生まない空き室を生み出し、折角の投資が却って経営の足を引っ張る事態にもなりかねない。

30年程度の長期スパンで投資を伴う病院施設の建設には、経営者は診療圏での自院のポジショニングと競合の動向を見据え、将来の病院経営を担う次世代リーダーを巻き込んで、自院が進む方向性と身の丈に合った病院像を描くことが重要である。

病院コンサルティング事業部 川越

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